さとうひろし 一有権者のブログ 

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zoom RSS 古典をこなした上での前衛

<<   作成日時 : 2009/08/03 00:42   >>

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友人さがゆきの6DAYSライブが無事終了。
http://www.aruma.be/
本格的に手がけてからまだ2年目のブラジル音楽を除く、さがゆき全集的内容。

初日(7/26)は、類稀な演奏技術もさることながら、さがゆきとのユニット「ココペリ」では、CDに収録された端正な演奏からは想像もつかないアグレッシブで型破りなプレイを披露する林正樹
http://www.c-a-s-net.co.jp/masaki/
とのライブ。アグレッシブとは言っても、スタイルに妙なこだわりが無いので、このユニットのファンはほとんどが女性。この日も自由奔放にブッ飛んでくれました。

2日目(7/27)は、先日のブログにも書いた、高橋悠治、山本達久との初トリオ。この日のプログラムは、1st., 2nd. ステージ共に悠治さんの難曲があったにも関わらず、悠治さんの提案で、全編ぶっつけ本番で決行されたことに気づいた観客は、一人も居ないんじゃないかと思えたほど精緻さと勢いが両立した演奏でした。
http://hiroshi-s.at.webry.info/200907/article_9.html

3日目(7/28)は、田村博(pf)とのスタンダードジャズデュオ。と言っても相手は、原曲の音符と音符の間や休符にアドリブをネジ込む(冗談ではなく)田村さん。全球変化球みたいなもんです。スタンダードジャズ専門の店でありながら、こういう表現を受け入れる「あうん」のママさんの懐の広さは半端じゃない。聞きに来るお客様も。
http://aunaun.fc2web.com/
http://www.jazzpage.net/tamura_hiroshi/index.html

1日休んだ4日目(7/30)は、唯一無二の即興ユニット「シナプス」。日本では全て「インプロヴァイゼーション」で括られがちの即興演奏だけれど、シナプスは"Abstract"と言うに相応しい。絵画で言えば、完璧な具象画を描ける画家が考えあって挑むアクションペインティングのようなもの。楽曲演奏で十二分にトップに立てるプレイヤーが、楽曲に飽き足らずAbstractに挑むという点で、シナプスは恐らく日本唯一、世界有数の存在でしょう。この日も、相方の加藤崇之さんが、耳の具合が悪かったにも関わらず、ほとんど怯まず(むしろいつも以上に)、かつ繊細に爆音を積み重ねていました。2nd.ステージは、まさかのゲスト喜多直樹(vln)(本当は客で来ていたんですが)。シナプスの音響竜巻の中、よく生還できたと思います。
http://newuzu.cocolog-nifty.com/

5日目は、「山さ山」と題して、山本精一(gt)、さがゆき、山本達久(Per)の初顔合わせ。もちろん完全即興。ゲストには、「ドラびでお」としても有名な一楽義光さんの娘さん、一楽まどか(グロッケンシュピール)。
こちらも(いい意味で)なかなかいい按配にブッ壊れていて、終始目の(正確には耳の)離せない演奏。Abstractを継げそうなポテンシャルを持つ演奏家が少しずつ出てきたか?


そして最終日。
彼女が相手に選んだのは、スタンダードジャズ一筋の大御所、潮先郁男さん。日本のジャズ系ギタリストやギター指導者で、潮先さんの指導を受けていない人は居ないと言われるほど、知る人ぞ知る大家
http://www.geocities.jp/txcny685/
スタンダードと言っても、ジャズですから、楽譜に書いてあるのはほぼコード進行だけ。その楽譜さえ、潮先さんはほとんど見ない。どの曲も、オープニングからエンディングまで実質全編アドリブ。全編アドリブの演奏に合わせ、さも何度も練習したかのように伸び伸び歌うさがゆき。しかもこの夜の曲目の、3割位は彼女にとって初めての曲。

最終日が終わり、彼女は、「6日間の共演者の中で、(一番スタンダードな表現に徹している)潮先さんの演奏が一番自由だった」と語っていました。確かにそうかも知れません。楽曲(音階とリズムで構成された聴覚芸術)からかけ離れたことをすれば自由かと言えば、必ずしもそうではなく、そういった様式面で一見自由に見えるプレイは、「創造性」という視点で見れば、「楽曲」という発想、あるいは「和音」という西欧由来の美学に縛られているが故の悪あがき、楽曲をきちんとこなせない劣等感の裏返しだったりすることも珍しくありません。 現代音楽、(ジャズ系の)フリーインプロヴァイゼーションと呼ばれる演奏の大半は、実際にはその類ではないでしょうか?

潮先さんは、インプロヴァイザーではないから、様式的な自由にとらわれる必要がない。 逆に、インプロ、フリー、即興などと下手に言ってしまうと、却ってそれが縛りになってしまいがち。

さがゆきや、(シナプスの相方である)加藤崇之さんは、楽曲のライブできっちり人を魅了することが出来た上で(加藤さんの弾くボサノヴァはほんと素敵です)Abstractに挑んでいる。だからシナプスのパフォーマンスは、芸ではなく音楽になり、「論」の力を借りなくても問答無用に芸術になっているんだと思います。そして二人共、事ある毎に、「潮先郁男を聴きなさい」と、言い続けています。絵と言うより壁のような抽象表現でその名を歴史に残したマーク・ロスコが、偉大な具象画家であるマチスをリスペクトしていたように。

けれど、これほど基礎から前衛まできっちり実績を残し、同業者の間からは一目置かれ続けているさがゆきが、なぜ、世間ではまったく無名に近い存在なのか?その裏には、業界の事情も絡んでいる気配があります。
(続く)

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現在潮先郁男さんは、脳梗塞のため緊急入院中です。1日も早く回復なされることをお祈りしています。詳しくは下記をご覧ください。

http://www.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=28777&log=20090802
潮先さん緊急入院中
2009/08/03 00:45

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