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zoom RSS 学術交流というより思想集会?(新日本未来学会シンポジウムに参加して)

<<   作成日時 : 2010/07/22 00:26   >>

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先週末のことになりますが、新日本未来学会という団体の、2010年度シンポジウム「〜持続可能なくらしとコミュニティの未来」 を聴講してきました。

シンポジウム前半は、俗にエコビレッジと呼ばれる集落の開発事例が中心でした。エコビレッジとは、人間の生活に伴う物質の循環が、出来るだけその地域内で完結するように自給自足と地産地消を推し進め、なおかつこれらを極力環境負荷の少ない手段(有機農法や廃棄物の再利用等)で実現し、物質循環が幾世代にも渡って持続するように計画されたコミュニティ開発事業で、今回のシンポジウムでは、自給自足の実験を重視した開発や、リタイヤした高齢者を中心に(必ずしも血縁があるわけではない)多世代が助け合って暮らす社会作りの実験に軸足を置いた開発や、都市近郊における小規模な農業経営の実験に軸足を置く開発などが紹介されました。事例報告の後には、コミュニティ作りの具体論より少し俯瞰的な見地から、日本の住宅制度の問題点(高度経済成長期の法令や制度が今もそのまま残り、現実の社会環境に合わなくなっている)も説明され、とてもいい勉強になりました。

続く後半は、前半で報告されたようなコミュニティ作りを、より一層社会に浸透させるにはどうすればよいか?という視点からのパネルディスカッションだったのですが、議論が進むにつれ、ちょっと妙な雰囲気に・・


前半で報告された事例ひとつひとつはもちろん、とても斬新で意欲的で、将来の社会像を考える上での示唆に富んだテストケースなのですが、それはあくまでテストケース、技術開発の世界言えば実験室内の成果であって、そのまま社会全体に適用できる訳ではありません。

これらの事例は、既存の農地保護を試みる事例を除けば、有志、それも千万円単位の投資をする財力のある人たちが作るコミュニティの事例ばかりで、社会全体から見れば、一部の恵まれた人達だからこそ実行できる実験です。一方社会の大半の人達は、わざわざ自ら投資をしてまで、世間の経済循環から離れた土地に移り住むゆとりもなく、大半の人達は、経済的な制約や、家族の都合のせいで、自由に引越しをすることも生活の中で関わる隣人を選ぶこともできません。

つまり有志で集まる人だけでコミュニティを作るという、現在のエコビレッジ作りの前提自体、実社会で一般住民を対象とする政策に適用するのは不可能な話なのですが、今回のパネルディスカッションでは、その点に全く触れないまま、今後この運動をどう広めようかという方向に話が進んでしまい、これらの実験成果の中でどんな要素が一般社会に適用可能か?という現実的話題が皆無だったのは残念でした。

更に、コミュニティを維持するための秘訣として、コミュニティの住人が互いに徹底して自己開するのが大事だという意見まで出ていました。もちろん、理想的な人間関係を前提にするなら、つまり、互いに性善説で相手のために最善を尽くし、相手が抱えるどんな重い現実も、何があっても責任を持って受け止める覚悟を誓い合った仲間同士だけで暮らすのなら、自己開示はとても有効かつ大切なルールだと思います。

けれど、現実問題として、そんな固い信頼関係で結ばれた仲間を作ることが出来るでしょうか?
自己開示で信頼関係を築くには、全員が、自分の価値尺度で他人を評価してしまうのを自制できるのが必須条件ですし、どんなに重い現実を打ち明けられても、その現実から目を背けず、自分も一緒にその現実に立ち向かわなければ、自己開示した人を却って深く傷つける結果になりかねませんが、

そんな理想的な人間ばかりの集団を、現実に幾つも作れるのでしょうか?

自己開示の重要性を主張した二人のパネラーのうち、社団法人コミュニティネットワーク協会近山恵子さんは、実際に自己開示を受け止める難しさも述べ、現状では、精神疾患歴のある人など、コミュニティーに受け入れられない人も居る点を率直に認めていましたが、自己開示の重要性を主張したもう一人である古橋道代さん(グローバル・エコビレッジ・ネットワーク日本大使)は、人間関係の確執をある程度経験した人間なら誰でも容易に想像が付くはずの、自己開示の危険性については一切語りませんでした。コミュニティ作りを議論するはずの学術的集会で、こういう発言(メリット・デメリットを公平に説明しない)に対して、何の問題も指摘されなかったのには、不自然な印象を抱かざるを得ませんでした。

ましてや近所付き合いの相手を選べない一般社会では、徹底した自己開示は、円滑なコミュニケーションどころか、逆に無用なトラブルを生む結果になるケースが多いのではないかと思います。

シンポジウムの前半では、とても意欲的な事例が報告され、大変興味深かったのですが、後半のパネルディスカッションでは、話の流れが何かの思想運動みたいになってしまい、学術に相応しい冷静な問題提起があまり見られなかった点は残念でした。

そんな中、シンポジウム前半で、日本の住宅行政の課題を解説した、上田昌文さん(市民科学研究室代表)の発言は、後半のパネルディスカッションにおいても冷静で、(エコビレッジなどの実験事業に限定されない)社会的課題を俯瞰的に捉える視点に徹していたのが良い意味で印象的でした。

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