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zoom RSS 全ての身体表現に通じる根幹(さがゆきWSレポート)

<<   作成日時 : 2010/10/07 12:20   >>

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下記は、去る7月4日に、門仲天井ホールで開催された、、「第10回さがゆき完全即興ワークショップ」のレポートです。このたび講師のさがゆき本人より、レポート公開の承諾が得られましたので、ワークショップの模様を記載したレポートを、一般公開いたします。


1.はじめに

 第10回を迎えた「さがゆき完全即興ワークショップ」は、いつものことながら多彩な顔ぶれの参加者が集まっていた、歌を歌う者、楽器を演奏する者はもちろん、即興詩人、舞踏家、幼児、そして筆者も今回は、記録係ではなく、即興フォトグラファーとして参加するよう、講師のさがゆきから指示された。受講生は約30名。そのうち男性は筆者を入れても10名ほどで、女性が多かった。


2.オープニング

 オープニングは、これまで筆者が見学した第6,7,8回目の「さがゆき完全即興ワークショップ」とは異なり、準備運動からのスタートだった。参加者はおのおの発声練習をしたり、楽器のチューニングをしたり。床でストレッチを始める受講生も。そのうち講師が率先して場内を歩き回ったり床に寝そべったりのリラクセーションを始め、同じく床に寝そべる受講生が一人、二人と増えて行った。

 準備運動が一段落すると、次は講師の指示で、各自その場で一斉に全力駆け足。このとき既に、数分後の講師の指導を先読みするかのように、素足になっていた受講生数名。素足になっていたのは全員女性。数十秒ほどの駆け足に続いて講師はその場で寝そべるように指示。しばらくすると立ってまた駆け足。そしてまた寝そべる。床に寝ている受講生に対して講師は「五感をフルに味わう」ように指導。聞こえて来る音、漂う匂い、床の感触、温度、隣の人の体温・・・など味わいながら、各自気が済むまで床に寝ているようにと、受講生達は指導され、全力駆け足のスタートから10分ほど経過した頃、全員が床を離れた。そのあと講師は、五感だけに意識を向け、感じ続けることの難しさと大切さを語った。感じた事に、良し悪し(好き嫌い)の判断を加えてしまうのは思考であって、感じる事そのものではない。考えるのではなく、ひたすら感じ続けることが大切なんだと。


3.即興演奏体験

 続いてのプログラムは、このワークショップでは恒例になった、暗闇の中での即興。「自分の音を出したくなったら出す。他の人の出す音を感じながら。ただし他人の音に合わせるのではなく。そして音を出すのを止めたくなったら止める。ただし周りの人に合わせてではなく。」という講師からの指示を受けてスタート。
これまで筆者が見学したワークショップでは、このプログラムは数分から高々10分程度で終了したが、今回は30分ほどの長丁場。実際、音が途切れる場面はほとんどなく、受講生達が入れ替わりたち替わり音をだしていた。ここで大活躍したのが、今回の受講生中最年少、5歳になったばかりの女の子Iちゃん。大半の受講生の出す音が、各々ほぼ決まっていたのに対し、Iちゃんは父親が持ってきた様々な鳴り物を代わる代わる演奏?するだけでなく、体も使って全身表現。受講生の一人として参加していた父親が、彼女を退屈させないように小まめに面倒を見ていた点を差し引いても、なかなかの発想力。さすが、講師のさがゆきが「この子は私が共演したアーティストの中で最年少だから」と招いただけのことはある。

 30分に渡る即興体験の後は、講師さがゆきが長年実践してきた「完全即興」の精神を凝縮させた、短くも中身の濃い講義。「魂レベルで気持ちが良いとはどういうことか」ついて。自分の出している音が、本当に魂が必要としている音か? 流されていないか? イージーな気持ち良さ(パターン化)や、何か(既存のスタイル)をなぞる気持ちよさは、「魂レベル」の気持ちよさではないと講師は語る。「普段は思考力を高め、演奏では忘れる。顕在意識が潜在意識に移った時、本物になる。」「無心に 遊ぶ子供の部分と、それを見守る自分と、両方が必要。」「周りを充分感じながら自分が出したい音を出す。3分位の間に自分の宇宙を出すつもりで。なんとなくはだめ。ひとつの音は周囲のみんなに影響する。本当にその音は必要なのか?自分が出したひとつの音が、他の人が出した音すべてを殺してしまうこともある。」と講師は語り、続いて今度は会場の明かりをつけたまま、全員で短時間の即興演奏。先ほどと比べ、音の有り/無しにメリハリが出て来る。Iちゃんも楽器を鳴らすことに専念している。

 ここまでのプログラムは、主に自分自身の音に意識を向ける体験が続いたが、ワークショップ後半に入ると、より実際のセッションに近いプログラムになって行く。


4.セッションプログラム

 後半最初のプログラムは、受講生を10名ずつ、3つに分けての即興セッション。やりたい者から順に10名ずつ、早い者勝ちでグループを作る。さがゆきのワークショップでは受講生の主体性を促すため、主催者側によるグループ分けは一切しない。一組目の演奏が始める前に、講師は受講生達に、ワークショップ前半での講義よりやや具体的なアドヴァイスを与えた。「ひとつの音を出す時は、赤ちゃんを産むつもりで(心をこめて)。しかもスピードを失わず、自分の体の中に何かが満ちた瞬間に音を出す。満ちていないのに音を出してもスピードは出ない。」「相手の音を感じて。ただし合わせるのではなく。即興演奏では各自がソリスト。」

 一組目の演奏が終わると、講師のアドヴァイスは更に実践的になる。「命とは常に躍動しているもの。だからスピードがある。スピードとは体のグルーヴ。慎重過ぎてはだめ。音楽が死んでしまう。」「惜しげ無く命を使え。」「自分の肉体と精神をどこまで吐露できるかだ。(出すべき音を)選りすぐって捨て身になれ。」

 二組目の演奏が終わると、講師は「精神を研ぎ澄ませば(時計が無くても)時間は読める。グーグル・マップのように高い所から自分を見るつもりで」とアドヴァイスした上で、3組目に対しては、演奏時間2分ぴったりにするよう指示(この課題は、いささかハードルが高すぎた模様)。

 三組目の演奏終了後、講師は「研ぎ澄まされた感覚で、人は人に対して驕りたかぶることはできない。研ぎ澄まされていれば、人は(必然的に)謙虚になる。音楽とはそういうもの」とのコメントでプログラムを締めくくり、プログラムは更に少人数のセッションへと進んだ。


5.更に実践的なプログラムへ

 ここから先のセッションは3人一組。まずは、3人のうち誰かが演奏を止めたら、すかさず(残り二人以外の)新たなメンバーが入り、常に3人での演奏を続けるプログラム。これの演奏スタイルも講師さがゆき独自の指導法である。演奏開始前に講師は再度、「即興演奏は各自がソリスト」と念を押し、更に「(演奏中の3人以外も)全員が演奏に参加しているつもりで。」「15分で終わる(全員が1回ずつ演奏して終わる)ように。」と指示。最年少(5歳)参加者のIちゃんにには「サンタさんにお願いするつもりで(出す音を選ぶように)」と、分かり易くアドヴァイスして演奏開始。講師の言葉はとても簡潔である一方、極めて「言うは易し行うは難し」でもあり、受講生達の演奏からは、出すべき音を選りすぐる姿勢と、スピードを失わない演奏との折り合いを何処でどうつけたら良いのか? 戸惑いを感じさせる場面が多かった。

 全員が一通り演奏を終えた後、今度は、全員参加の意識を高めるためか、演奏前にまず全員が立ち、演奏者は前に出て演奏し、演奏を終えた者だけが座るやり方に変更して、「命を出し惜しみしないように」との講師からのアドヴァイスの下、再度3人一組の入れ替わり即興演奏。先ほどと比べ、音が引き締まってきた。

 実際のセッションに近い形での演奏体験のあと、この日2回目の講義。ここでは講師がこれまで述べてきた、「音を出す瞬間」の心得の延長線上として、グルーヴの解説。詳細については著作権の関係上、ここに書くことは出来ないが、さがゆきの指導に特徴的なのは、彼女の「グルーヴ」論の特徴は、古今東西、「音楽」と呼ばれたあらゆるパフォーマンスに当てはまるばかりか、舞踊、舞踏、芝居の台詞まわしなど、生身の身体を使ったあらゆる表現にあてはまる点にある。更に彼女のグルーヴ論はすべて、小学校低学年の児童にも理解できる簡単な言葉で説明されていて、音楽経験が皆無小さな子供でも容易に、グルーヴを身につけられる。ただし、実際の楽曲演奏で、どんなテンポであってもどんなリズムであっても、さがゆきの指導するように、グルーヴをコントロール出来る域に達するのは至難の業。彼女の言葉はどれも、「言うは易し行うは難し」である。


6.講師 真髄を語る

 グルーヴの解説の後、講師の話題は再度即興に戻り、講師さがゆきが長年の実践で積み上げた持論が語られた。これもまた、音楽に限らず様々な身体表現に当てはまる話ばかりだった。それどころか、写真や絵画、彫刻などの、視覚のみに訴える表現にもあてはまる話が少なくなかった。

「その人に無いものはどうやっても出て来ない。」
「即興は命でやるもの。(技術の)上手下手は関係無い。むしろ手癖が仇になることもある。」
「即興は長くやるほど大変。如何に自分の身に付いてしまったものを脱ぎ捨てるか?」
「集中し過ぎると「我」が出てしまう。周辺視が大事。」
「今を生き切ることを知るために即興音楽がある。演奏が始まったら、ポーンと命を投げ出すつもりで。そういう演奏でなければ感動は無い。命を投げ出すということは生き切るということ。そこで得られるものは至福。神様からのプレゼント。」
「演奏とは祈りのようなもの。「お祈りしたから大丈夫」という気持ちになると、願い事への囚われから開放されて、(行き過ぎた)集中視から周辺視になる。」
「即興は、他の音楽以上にお客さんが演奏に大きく影響する。お客さんも演奏に参加している。」
「お客さんの期待に応えようとしたり、迎合したら、娯楽音楽・商業音楽になってしまう。イージーな心地よさに埋没したり、人をなぞってはいけない。もちろん、共演者と全く関係無いことをしてもだめ。」
「実験的な音楽と即興を混同してはいけない。」
「個性とは箱庭みたいなもの。人を「こうだ」と決め付けること。個性なんて小さなもので、自分を括ってはいけない。」

 そして、この日のワークショップ最後のプログラムは、3人一組メンバー入れ替わり無しの即興セッション。1グループの持ち時間は3分。舞踏家の受講生も居たので必ずしも全員が音を出したわけではないが、これまでの講師の話しからも分かるように、講師さがゆきの語る即興は、音のある無しに関係無い。一組終わるごとに講師から簡単な講評が加えられてワークショップは終了したが、ごく短時間の実演を見て必要な課題を指摘するのも、さがゆきの真骨頂である。

 今回のワークショップは、参加予定者の希望もあり、半日のプログラムとなったが、終わって見れば、受講生から「もの足りない」との声が相次ぎ、次回のワークショップは合宿形式で行うことが、その日のうちに決まってしまった。
http://blog.goo.ne.jp/crescer/e/2653076827dc10eec8fb6d60b898186b


7.取材を終えて(さがゆきの独創性について)

 筆者はこれまでに3回ほど、さがゆき完全即興ワークショップを見学したが、今回のワークショップで印象に残ったのは、講師の語る言葉の簡潔さだった。これまで、粘菌、tensegrityなど、芸術以外の様々な事物を比喩を用いて、自分が実践してきた即興パフォーマンスの原理原則を説明してきたさがゆき(下記URL参照)が、
http://hiroshi-s.at.webry.info/200903/article_7.html
今回は、音楽表現に直結する言葉を選んで講義に臨んでいた。精神論も多かったが、表現が直接的で簡潔だったため、受講生達は、実際に音を出すプログラムで自分が何を体験したのか、何を学んでいるのかが、比較的容易に理解でき、これまで以上に「もっと学びたい」という意欲が湧いたのではないかと思う。

 さがゆきの言葉は、文字に残すと一見、民衆にとっての音楽の楽しみなど無視した芸術至上主義にも見えるが、彼女は、即興パフォーマンスで日本のライブシーンの最前衛に立ち続けるのと同時に、スタンダードジャズという、スタイルが確立された音楽の世界でも一目置かれる存在であることに留意しなければならない。彼女は、一部の現代音楽家や大学教員達のように、芸術論という理屈で自分達の活動を美化することで、かろうじて社会的立場を維持している人間達とは対照的に、芸術「論」などとは無縁のリスナーや、ライブハウスのオーナー達からのリクエストで30年近くに渡り音楽活動を続けている。ごく限られた人たちだけが共有する理屈によってしか価値を維持できないパフォーマンスなど、彼女の語る「芸術」や「音楽」には含まれていないと、理解すべきだろう。

 更に彼女の指導内容は、先にも述べた通り、あらゆる音楽に共通するばかりではなく、舞踏その他様々な身体表現に当てはまる。恐らくスポーツ(特に個人競技や格闘技)にも当てはまる。それどころか、写真や絵画、彫刻など、身体表現とは見なされない活動にもあてはまる話が少なくなかった。
一見、音楽や踊り以外の表現には関係ないように見える彼女のグルーヴ論でさえ、彼女が指導する身体感覚を、そのまま心のテンションの変化に置き換えれば、写真やビデオ撮影(とりわけ人や動物や、波や雲や、常に変化し続ける対象を連続して撮影する場合)の心構えにあてはまる。

 およそ表現と名のつく行為全てに当てはまりそうな原理原則を、簡潔な表現で表す彼女の指導を、表面的な言葉だけで真似するのは難しくは無い。暗記すれば良いのだから。実際、彼女とは、表現力でも技能でもキャリアでも、彼女の足元に及ばない段階の音楽屋達が、即興の指導と称して有料の仕事をしているのが、残念ながら日本の音楽界の現状である。しかし、受講生の実際の演奏や発声について、その場で、さがゆきのように、受講生一人一人の能力に応じた、きめ細かく、かつ具体的なアドヴァイスが出来る講師が、いったいどれほど居るのだろうか?本物と、コピー商品との違いはそこに出る。

 次回、合宿形式で行われる完全即興ワークショップに参加する受講生達は、本物の指導者ならではの手応えを、今回より一層はっきり体に刻んで持ち帰ることができるだろう。

以上。

さがゆき公式ホームページ↓
http://www.aruma.be/index.htm


文責:佐藤宏


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