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zoom RSS オーディオはなぜ衰退したか(日本メーカーは自滅した)

<<   作成日時 : 2011/11/10 02:29   >>

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私が週替わりで作品を出品しているギャラリーでの雑談で、先月亡くなったスティーブ・ジョブスの話題からiPodの話、そして音楽談義へ。

Apple社のiPodの世界的普及で、若者が質の低い音で満足するようになり、音楽文化が衰退したと、Appleを批判する人は多いけれど、それはApple のせいではなく、iPod が世に出る前から、音楽業界が流通させている音楽の方が、せいぜい数百kbps 程度の音質しか必要としない内容になってしまったから。Apple社は現実に流通している音楽の質にあわせた商品を作っただけ。

CD、更にはネットワークオーディオの普及で、アルバム全体で完結するような作品が作れなくなったと言う人も多いけれど、それはメディアのせいだろうか? 確かに1960年代半ばから70年代までは、作品としてのアルバムが数多く生まれたかも知れないけど、その後は? フォーマットとしてのアルバムは残ったけれど?

考えて見れば、”アルバム” で音楽ビジネスが動いたのは、1960年代半ばから、せいぜい80年代はじめまでで、その前も後も、音楽ビジネスはシングルヒット狙い中心だったのでは? iPodを批判するような人達の言う「いい音楽」を放棄したのは、ほかならぬ音楽業界の人達だったのでは?

私がかつて勤務していた日本のオーディオメーカーでも、「いい音」「本物の音」が売れなくなってきたと嘆く先輩社員は多かったけれど、彼らはそもそも、彼らの言う「いい音」のステレオに相応しい音楽を流通させ続けるために、何か努力をしていたのか? それ以前に、音楽を理解する努力をどれほどしていたか?「それはメーカーの仕事ではない」と、自分達が食べて行く上で欠かせない市場の活性化に、知らん顔していた結果ではないのか?

昔、「音楽は本来生で聴くもの」という観念が言うまでも無い常識、と言うより、それ以外の観念が存在していなかった時代、オーディオメディア(ラジオ、テレビ、レコード、テープ、そして黎明期のCD)は生演奏を楽しむ代替として存在していた。だからモノラルよりステレオ、更には4チャネル(今で言うサラウンド)が良いとされ、再生周波数大域も広ければ広いほど良いとされた。

けれど現実には、高々数個のスピーカで”生”が再現出来る筈もなく、音楽メディア制作の現場は常に、(生演奏の再現ではなく)創作の現場だった。

メディアに記録(またはメディアで伝送)される音楽はあくまで、生とは別の創作物であり、制作者の表現。
そのことを、日本のオーディオメーカーの人間達がどれほど自覚していたか?
自分の作った物が、メディア制作者の表現を、責任を持ってリスナーに届けられるものなか?
果たしてその問題意識を持っていたのか?
メディア制作者の表現意図を理解しようとする姿勢が、いったいどれほどあったのか?


理想論で言えば、例え数千円のラジカセでも、その責任から逃れることは出来ない。
与えられたコストの中で、表現を伝えるために何をすべきか? の問題意識があったか?
少なくとも建前の上では、オーディオ装置の意匠デザインも、メディア制作者の表現を伝える媒体でなければならなかったはず。

少なくとも私の就職先は、私が就職した時点で、既にそんな問題意識は無く、メディア制作者の意図などお構い無しの、技術者の私的なこだわりがはびこっていたのみ。

それが明確にわかるのは、海外(特に欧州)ブランドのオーディオを聴いた時。彼らには明確に、オーディオ装置ではなく、音楽に対する造詣がある。だから信号処理の殆どがディジタル化されても音に個性のあるブランドが少なからず残る。BOSEの設計の割り切り方など、見事と言う他ない。生演奏に精通していなければ、あんなに思い切った見極めは出来ない。


日本のオーディオ業界は、音楽に対する尊敬を失ったが故に衰退した。自滅だと思う。
それを、あれやこれやのビジネス環境のせいにしている間は、創造的な商品など生み出すことは出来ないだろう。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
オーディオ衰退について考えていたところ
こちらのページに行きつきました。私つい2年程前まで とあるオーディオメーカー勤務していました。私も「自滅」という言葉が当てはまっていると思います。 「不景気だから、、、」「CD等デジタルソースになってから音の違いがわからなくなったから」「PCや携帯が普及してきたから」「お客さんがipodで聞くようになったから」これらは すべて 言い訳です。末端にいた自分にも責任がありますが 経営に携わる人や幹部と呼ばれる社員が 真剣にオーディオ離れに対して取り組まなかったからです。 根っからのオーディオ好きが出世する事はあまり見た事が無く オーディオ談義よりもゴルフのハナシ、といった有様です。私も含めて「ユーザーを音で感動させる」といった事を考えなくなったからだと思っています。バブル崩壊、リーマンショック関係ありません。言い訳にすぎません。
チックタック
2011/12/05 16:46
チックタックさま
コメントありがとうございます。
経営陣がオーディオ離れに取り組まなかったと言うか、本人達は取り組んでいたつもりでも、傍から見れば、単に今までの売り方で儲け易い商品企画に固執しただけ。数十年前は、単にオーディオ好きなだけでなく、それ以上に生演奏に足げく通う人も経営陣の中には居たものですが、近年は、お客様のライフスタイルを、実感を伴って考える事が出来ない人間に主導権が渡りましたから、ビジネスが成立する訳がありませんね。
さとうひろし
2011/12/06 02:00

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