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zoom RSS 要するに奢り2(ユニバーサルデザインシンポジウム聴講記)

<<   作成日時 : 2012/06/30 02:20   >>

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6月29日、臨海副都心のメガウエイブで開催された、「ユニバーサルデザインシンポジウム 2012」に参加してきました。 各企業の発表は、その会社の”現場力”が反映された内容で良い勉強になったのですが、気になったのは冒頭の基調講演の内容でした。

基調講演は、産学連携推進機構理事長の妹尾堅一郎氏による、「デザイン起点型イノベーションとスマートデザインの可能性」というタイトルの講演だったのですが、講演内容は、具体的な商品やサービスの紹介を除けば、10年以上前から、指摘されていた課題ばかりでした。デザインや、バリアフリーや、ヒューマンインターフェースの世界では、遅くとも今世紀初めまでには(古いものは1980年代から)広く認識されていたトピックが、今でも人を集めるイベントの目玉になっている。ではいったいこの10年はなんだったのか?

例えば、
妹尾氏が配布した資料に記載されていた
>イノベーション=社会・産業・生活等の「価値システム」の基本モデルを大きく変えること
という話を、(デザイナーでも企業家でもマーケティング担当でもない、技術者だった)私が始めて知ったのは、1990年代前半でした。こうしたイノベーション(当時は価値創造と呼ばれる事も多かった)をやらなければ製造業が生き残れないだろうことは、当時研究開発部門でも共有されつつありました(そして後年、各社共懸念した通りの事態に陥った。当時中国や韓国の凄まじい技術革新は予想されていなかったが、価格競争の激化により、年を追って利益率が下がるだろうことは予想されていた)。

>「事業起点型イノベーション」の方法論としての「デザインドリブンイノベーション」
*ここで言うデザインとは、新たな価値形成、商品設計、ビジネスモデル構築も含む広義のデザイン
の必要性も、1990年代には日本国内でもしばしばメディアに取り上げられていた課題です。

また妹尾氏がスマートフォンの特徴として掲げた、シンプル、直感的操作、ワクワク感の重要性も、現在のパソコンやタブレット端末の実現を予言した(実現を目指して研究していた)アラン・ケイ氏が1970年代に指摘していたことは、コンピュータサイエンスの世界では広く知られており、1980年代には、アップルコンピュータ社のMacが、その具体像として発売されていました。

つまり日本国内では、20世紀末からその必要性が指摘されてきた機能(サービス)を具現化したビジネスが未だ皆無で、課題解決が未来の話になっている(棚さらしにされたまま)ということです。やるべきと分かっていることを、事情はどうあれクリアできなかったのですから、国際競争力が落ちるのは、残念ながら自明です。

広義のデザインにおける、多岐に渡る課題を、「スマートデザイン」というキーワードで互いに関連付けた妹尾氏の手腕にケチをつける気は毛頭ありませんが、日本企業における(広義の)デザイン上の課題を手際よく解説した妹尾氏の講演によって、日本の、とりわけ大手メーカーの、10年以上に渡る(怠惰に近い)停滞が、改めて浮き彫りになった印象がありました。


その他の講演については下記の通り。やはりトヨタのマンパワーと資金力が際立っていました。

「ロボットと暮らす社会に向けて トヨタの介護医療支援ロボットへの取り組み」トヨタ自動車パートナーロボット部部長 玉置章文氏:
トヨタの数あるロボット開発のうち、医療介護関連に限っての事例紹介だったが、開発中の機種が3つや4つではない模様。並行して開発している機種は二桁に届くかも知れない。また、講演では詳細説明が無かったものの、研究のアプローチが、普通の工学系の研究室(機能を一つ一つ検証)や学術界(仮説を一つ一つ、別々の調査・研究で検証)とは全く異なる模様。仮説検証の積み上げではなく、医療・介護現場の人達からの要望に基づき、フィールドテスト用の試作機(検証すべき機能を多数搭載)をダイレクトに制作し、定量評価も一つ一つの機能検証というより、現場の人の評価を数値化する事に重点が置かれている印象(個々の機能検証用のデータは自動収集されるように初めから設計されているのかも知れない)。その上で、脳波で制御する電動車椅子のデモ映像を見せるなど、基礎研究レベルの技術力もさりげなくPR。2010年代中に、何らかのパートナーロボットを商品化する予定とのこと。スピーチも全く淀みなく過不足なく、極めてプロフェッショナルな印象l。

「あそびで社会に貢献するという発想 −ボーネルンド30年の取り組みから」 ボーネルンド取締役広報室室長 村上裕子氏:
輸入玩具・遊具の販売を通じて、子供の生活環境に合った遊びを開発・提案しているという触れ込みだったが、実際の講演内容は、輸入元(の国であるデンマーク)や顧客側のトライアル紹介が大半で、同社による自発的な問題発見や、改善に向けてのトライアル、顧客からのフィードバックに対する自発的な取り組みがどの程度あるのか(会場で配布された資料を見ても)よく分からず、他人のフンドシで相撲を取っている印象はぬぐえなかった。講演内容の時間配分も、半分近くが具体性を欠く思想表明に割かれており、怪しい健康食品・器具の営業と同類の印象を受けた。もし自分が顧客側の担当者だったら、この企業との提携には慎重にならざるを得ないだろう。もっとも、演台に立った同社の取締役が、同社の現在の、現場(子供達が遊んでいる場)での取り組みを、充分に把握していなかった可能性は残る。

「いつもの便利×もしもの備え」シリーズ開発への取り組み」 パナソニック アプライアンスマーケティング ジャパン本部本部長 原正一郎氏:
表題の商品シリーズ開発裏話の紹介。ポイントは、@全て既成商品の仕様変更か商品化済み技術の応用であること(技術開発成果ではなく潜在需要発掘の成果) A既存の慣例やルールを打ち破り、従来は不可能だった迅速な商品化と物流に成功したこと。 の2点に集約され、講演内容は、新商品の開発だけでなく、東日本大震災直後の、被災地への乾電池提供も含まれていた。「何をすべきか」が明確であれば、そして、お客様、社会への貢献が、上位概念として(海外拠点も含む)全社で共有できれば、パナソニックのような巨大組織であっても、既存のルールを打ち破ることができるという好例。ただ気になったのは、個々の商品はみな、どこかで見た(海外のベンチャーが同様な商品を開発済みでネット通販等で購入可能)ものばかりだった点。品質や、大量供給の安定性は日本の大手家電の方が格段に優れているだろうが、構想力はどうか? ひょっとしたら日本メーカーは、社内のデザイン・イノヴェーションにコストと時間を割くより、世界の優れたデザインを、(デザイナーにとっても)適正な価格で仕入れるようにした方が、世界規模で見た場合、より大きな社会貢献が出来るのではないか?という気がした。


以上。





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