「表現の不自由展・その後」ファクトチェック

名古屋市長による、少女像の展示中止要求からテロ予告に発展し、会期終了間際まで展示中止を余儀なくされた、あいちトリエンナーレ2019の「表現の不自由展・その後」ですが、私は幸い、展示再開後の抽選に当たり、作品を直接観ることができました。展示されている作品の中には少女像のように、そのテーマ自体が暴力的な隠蔽圧力に晒された作品もある一方、(出品を拒否された)という武勇伝を、水増ししているかのような作品も、ありました。

話を一旦、先月末に戻しますが、9/29に東京で開催された、日本サウンドスケープ協会臨時総会&シンポジウムの席上、同協会理事長と前理事長(9月時点の)より、
日本サウンドスケープ協会が、2013年に、千葉県立中央博物館において開催した、「音風景の地平をさぐる」展で展示した「福島サウンドスケープ」というコンテンツが、「表現の不自由展・その後」にも展示されているが、コンテンツの説明に、事実とは異なる内容があり、(来年度から正式に社団法人化される)当協会の、社会的信用を損なわないためにも、当協会として事実関係を明確にしておく必要がある。
との問題提起がありました。

私が、抽選制で入場者を限定している「表現の不自由展・その後」に、わざわざ足を運んだのは、個人的な関心だけでなく、自分が理事を務めている日本サウンドスケープ協会の、理事長・前理事長(9月時点)も、「表現の不自由展・その後」の会場における展示内容を問題視しているのが分かったからです。

そして会場に足を運んで観ると、展示されていた「福島サウンドスケープ」の説明にはやはり、事実とは異なる記述がありました。

結論から書くと、
>本作は2013年の「音の風景」展(千葉県立中央博物館)に出品されたが、作家自筆の説明文が。福島大学の学長と執行部の除染活動不徹底への批判箇所の削除である。検閲の多様性も伝える例だ。
という説明文中、

>「音の風景」展(千葉県立中央博物館)に出品された
という記述が不正確で、

>作家自筆の説明文
という記述が事実とは異なり

>検閲・修正された
という記述も、事実とは異なっていました。


以下、事実とは異なる点を具体的に説明します。

まず第一に、検閲とは何かと言うと、検閲を行う(制作物の公開可否を一方的に決める)側と、検閲を受ける側(制作物の公開を申請する)側という、上下関係にある、二つの、それぞれ独立した立場の存在が、大前提となります。更に、比喩ではなく、客観的事実として検閲という言葉を使う場合には、検閲を行う主体が公権力、という限定が付きます。

「福島サウンドスケープ」の展示は、日本サウンドスケープ協会と、千葉県立中央博物館との共催事業である、「音風景の地平をさぐる」展の一部であってので、検閲が成立する上下関係は、そもそも存在しませんでした。共催者に、任意団体である日本サウンドスケープ協会が含まれるので、客観的な意味合いではなおさら、検閲は成立しません。

そして、「福島サウンドスケープ」と命名されたコンテンツの制作者である永幡幸司氏は当時、日本サウンドスケープ協会の常務理事であり、同協会が行う全ての活動を、監督・承認する責務を負っていました。つまり永幡氏は、この展示の主催者側、すなわち出展物をチェックする側の人間でしたので、永幡氏自身と、展示の主催者との関係も、検閲が成立する上下関係にはありませんでした。

更に永幡氏は、日本サウンドスケープ協会の展示担当者と、(説明文原案の修正を求めた)千葉県立中央博物館との折衝で調整された、「福島サウンドスケープ」の説明文の最終的な文面について、電子メールで承認を与えています。すなわち、千葉県立中央博物館と、永幡幸司氏との間には、立場上も、文面を巡る交渉のプロセス上も、「検閲」は存在しませんでした。

次に、問題の説明文の文責は誰にあったかというと、これは、コンテンツ制作者の永幡氏ではなく、「音風景の地平をさぐる」展の、展示パネル(の版下)作成担当者でした。同展では、永幡氏作成のコンテンツに限らず、同展で紹介された協会員の活動全てについて、活動を行った当人ではなく、パネル作成担当者が、展示パネルに記載する文書を作成しており、個々の活動担当者は、永幡氏のみならず全員、パネル作成担当者に、説明文の原案を、提出していました。従って展示物の説明文は、「福島サウンドスケープ」に限らず、どの展示物についても、作家の自筆ではありませんでした。

展示パネルの説明文を、こうしたプロセスで作成したのは、「音風景の地平をさぐる」展が、日本サウンドスケープ協会員個々の、成果発表ではなく、日本サウンドスケープ協会という、団体名義での成果発表として企画されていたからで、同展の企画趣旨も、展示パネル作成のプロセスも、永幡幸司氏を含む、日本サウンドスケープ協会常務理事会が、承認していました。私自身も当時、日本サウンドスケープ協会の事務局長として、「音風景の地平をさぐる」展の構想から会期終了に至るまでの、永幡幸司氏も含む全常務理事、同展実行委員、千葉県立中央博物官側担当者の言動を、自分自身の会合出席と、議事録、メーリングリストによって、逐次確認していました。

上述の通り、千葉県立中央博物館における、「福島サウンドスケープ」の展示は、日本サウンドスケープ協会と、千葉県立中央博物館との共催で開催された、「音風景の地平をさぐる展」の中で、(個人名義ではなく)日本サウンドスケープ協会名義で出展されていた展示の一部でした。「表現の不自由展・その後」の会場パネルに記載されていた、「音の風景」展とは、日本サウンドスケープ協会制作の、「音風景の地平を探る」展も含む、複数の展示の総称なので、
>「音の風景」展(千葉県立中央博物館)に出品された
という、「表現の不自由展・その後」での記述も、嘘ではありませんが、「福島サウンドスケープ」が同博物館に展示された経緯を考えれば、正しい記述とも、言えないでしょう。

なお、上述の事実関係の概要は、日本サウンドスケープ協会公式HPの中の、下記URLにも明記されていますので、ご確認願います。
http://www.soundscape-j.org/activity_20th.html


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