先日アップロードした記事の補足になりますが、昨日、「
柏崎刈羽原発の閉鎖を訴える科学者・技術者の会3周年記念集会」という会合に参加してきました。会合での話題は、(当然のことながら)柏崎刈羽原発をはじめとする日本の原子力発電所の、特に事故・災害発生時における、電力会社および日本政府による、ずさんな安全管理や、問題を隠蔽し、対策を拒み続けている実態に冠する話題が中心でしたが、当日行われた飯田哲也氏(
環境エネルギー政策研究所所長)の講演では、原子力発電が、安全性のみならず経済合理性でも将来性に乏しいことが指摘されました。
飯田氏の講演内容のうち、日本のエネルギー政策、原子力発電の経済合理性に関する指摘は、例えば、
・日本の
産業界の、GDP当たりのCO2排出量は、北米やEUより明らかに多く、日本の産業の省エネルギー
は進んでいない(製鉄などごく一部の業種の省エネが進んでいるだけ)。日本の省エネは、家庭での(先進諸国の中では)貧しいエネルギー利用と、都市部の過密(満員電車など)によって、見かけ上高くなっているに過ぎない。
・(エネルギー供給を世界規模で見ると)自然エネルギー利用の伸びは原子力を上回り、原子力によるエネルギー供給は年々減少している。
・自然エネルギーへの新規投資は、世界規模で見ると2002年の71億ドルから、2008年の1189億ドルへと、10倍以上に伸びているが、
日本への自然エネルギー投資は、2008年時点でも、アジア太平洋地域への投資中の1~2%に過ぎない。
・2010年に入ってから、
欧州の複数の公的機関から、自然エネルギー依存率100%に向けた具体的シナリオが相次いで公開されている。
・(発電した電力の全量買取制度を導入すれば)自然エネルギー発電のコストは施設の累積設置量にほぼ比例して下がるが、原子力発電のコストは累積設置量が増えるにつれて増大する。
・
既に、太陽光発電の平均コストが原子力発電の平均コストを下回ったという研究発表もある。(John O. Blackburn and Sam Cunningham "Solar Energy is Now the better Buy", NC WARN (July 2010) より)
・2007年、米国で、原子力発電に対する様々な立場の有識者が集まった会合(Keystone報告)で、以下の見解が共通認識として合意された。「全般に、放置が弱い国、建設技術が未熟な国、運転・安全・保全文化の乏しい国、規制の甘い国に原子力発電が日とがることに懸念があることで、グループは合意した。」「原子力発電の拡大・拡散とともに、非核保有国での核燃料施設が広がると、核拡散リスクが高くなる。」「
商業用の再処理は非経済的、高速炉は非経済的かつ信頼性に劣る。」(The Keystone Center "Nuclear Power Joint Fact-Finding" (June 2007)より)
・近年、世界各国の投資専門家やエネルギー問題専門家から、
原子力発電の将来性に関する否定的な見通しが相次いで発表されている。
・「新規原発を建設する電力会社の債権価格は25~30%低落する」Moody's(2008年)
・「『原子力は競争力があり必要で信頼でき安全で安い』という通説は妄想だ」
Amory B. Lovins(2008年)
・「原発の発電コストは急激に上昇している」"Future of Nuclear Power",MIT(2009年)
・「原子力による短期的なCO2削減効果は限られている」世界銀行(2009年)
・「新規原発への投資にエコノミストはノー」シティバンク(2009年)
・「原子力は温暖化対策に間に合わない」スタンフォード大Jacobson教授(2010年)
など
・仮に、現在の日本政府の計画通りに、日本国内に原発を新規建設しても、2050年には(廃炉の増加によって)原子力発電の発電量は現在の半分以下になる(その一方で放射性廃棄物や廃炉処理の負担は増し続ける)
・フィンランドで建設中の原発、オルキオルト3号機は、2005年以来、「あと45ヶ月で完成」とアナウンスされたままになっている(建設費の暴騰で、完成の目処が立っていない)。
更に、飯田さんの解説によれば、欧州では、単に自然エネルギーの導入だけでなく、発電施設の建設や建設に際し、住民の合意、住民参加という原則に基づく新たなルール作りが進められており、国内全土に風力発電所が設置されているデンマークでは、地域毎に、風力発電用の風車を設置して良い場所、設置してはいけない場所が定められているそうです。
発電用風車の発する超低周波騒音による地元住民の健康被害が隠蔽されている日本とは大違いのようです。
http://no-windfarm.net/
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik09/2009-10-21/2009102114_01_1.html
http://www.geocities.co.jp/NatureLand/9415/sikou/sikou21_080427furyoku2.htm
http://www.geocities.co.jp/NatureLand/9415/sikou/sikou21_080308furyoku.htm
http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=13184&hou_id=10905
日本政府の原発推進政策が、経済合理性の点から見ても、いかに不自然な内容かが分かります。民主党政権は、自民党政権に引き続き、国内の原子力発電を推進するばかりか、原子力発電所を日本の輸出産業にしようとしていますが、上記の講演を聴いた限りでは、原子力発電の市場は、経済合理性の点からも安全性の点からも核拡散防止の点からも、拡大はおろか現状維持も想定し難い情況ではないかと思います。
なのになぜ、東芝・日立など、日本の工業界から見ればほんの一握りに過ぎないはずの企業グループの事業でしかない原子力産業に、民主党政権は執着するのか?これも不可解です。
以下、参考資料:
http://www.isep.or.jp/library/040911_PublicComment_tyukanshin.pdf
http://www.isep.or.jp/event/080603sympo/2050vision080603.pdf
http://www.re-policy.jp/
http://www.greenaction-japan.org/internal/100310_yomitoku.pdf
http://www.ecostation.gr.jp/interview/1996/6.html
http://blog.goo.ne.jp/coccolith/e/ac6ee7b0b681300fd9504819bf06c799