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zoom RSS 過去との対立もスタイルへの囚われも芸術に非ず

<<   作成日時 : 2010/11/28 02:39   >>

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都内へ所用のついでに、成城にある清川泰次記念ギャラリーへ行ってきました。館内には、清川泰次氏の遺した平面作品の他、彼が生前語った数多くの語録も展示されていましたが、中でも次の言葉が印象に残りました。

>制作態度:対立的なものの考え方をやめなくてはいけない。反逆精神の産物は、すでに次の瞬間から過去のものとしておき去られることに、気づくべきであろう。

彼が何度も渡米して現地で制作・発表を続けるなど、非常にアクティブな活動をしていた 1950年代から1970年代は、様々な文化が、過去の常識と対立するような形で生まれ(少なくともメディアはそのように宣伝し)た時代で、1960年頃にはフランス映画界で「ヌーベルヴァーグ」が生まれ、1960年代後半のアメリカでは「カウンターカルチャー」という言葉も生まれますが、彼が言葉に遺した芸術観はどれも、このような、新旧を対立軸に載せて語る芸術観とは無縁なものばかりでした。

一方世間では、1960年代だけでなく現在も、メディアが好んで取り上げる商業芸術(エンタティメント)だけでなく、アカデミックな芸術論議でも、芸術を、新/旧の対立軸で捉える考えはごく普通に見られます。和音とリズムから成る一般的な音楽を「古い」と卑下し、これらの構造を否定する(用いない)作品にのみ芸術としての創作価値があるとする作曲家の発言を、つい数年前に聞いたこともあります。芸術の価値を、新しいスタイルを生むことだとし、(継承できるような)スタイルの無いパフォーマンスは芸術ではないと言い切る大学教授の発言を聞いたのも、つい数年前です。

けれど、清川泰次氏が喝破したように(その他、多くの芸術家が同様な言葉を残していると思いますが)、過去を否定するためにやったことは、実行した瞬間に使命を終え、今度は自らが葬り去られるべき過去になるのです。
世間では、その使命を終えた行為の痕跡に「作品」「スタイル」という名前を付けて固定化するのですが、固定化された痕跡を「芸術」だと言って権威化するわけです。お金のために。芸術とは、痕跡を残した行為の方なのに。

世間の人の大半は、例えば、ジョン・ケージなど現代音楽家としてカテゴライズされた芸術家が遺したものを、「作品」として再演することに何の疑問も抱きませんが、芸術家達が過去行ったことをただ真似るのなら、それは、清川泰次が「おき去られる」と喝破した産物を芸術であるかのように見せかけて銭もうけをしているだけではないでしょうか?

これは視覚芸術についても言えるでしょう。清川泰次の言う「反逆精神の産物」を、単に作品として展示しても、それが何に対する反逆であったのかを提示しなければ芸術を世に伝えることにはならない。単なる銭儲けに過ぎません。世の中に、いわゆる「現代芸術作品」を収蔵している美術館は数多くありますが、銭儲け以上のことをしている美術館が、いったいどれほどあるでしょう?


清川は、
>「個人」を認めるようになった近代から、現代芸術の底流は「人間の自由」の尊厳ということであろう
とした上で、
>自由の世界からこそ本当の芸術は生まれ、「ソクバク」や「自由でない心」「とらわれの心」から生まれるものではない。
と書き遺してしています。

更に自らの作品姿勢については、

>何かにたよって描いてゆく ということから 一切離れて
心を全くの純粋な自由の中に置き
描きたい線 使いたい色 画したい面 
それらの構成で 未だかつて 見たこともない美が 生まれてゆく
私の 
無対象純粋芸術

と、徹底的に「とらわれ」からの解放を志向していました。


世間では、新しい「形(スタイル)」を生み出すことを現代的(創造的)な芸術、過去に生まれた形(スタイル)を守ることが伝統的な芸術と、よく言いますが、どちらも、形(スタイル)に価値を求めてしまうと、それは囚われになってしまい、「自由の世界」から生まれる芸術とは、ちょっと違うものなのかも知れません。

ましてや、「自由」を口実に、何か変わったことをすれば”芸術”になるとばかりに、付け焼刃の仕事を理論武装で正当化する自称アーティスト(美術家を名乗る輩もいる)など論外なのは言うまでもないでしょう。名誉欲や金銭欲へのとらわれから、変わったことという形にとらわれているのですから。

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