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<<   作成日時 : 2014/08/07 15:05   >>

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先日所用で金沢へ行った折り、金沢21世紀美術館へ行ってきました。友人のアーティストが「全部最低(展示作品について)!」と評していた美術館ですが、確かに芸術展示の施設としては、20世紀末に流行った「現代美術」を権威化する装置の域を出ず、21世紀に相応しいコンセプトは見出し難い状況でした。けれど、観光名所に忍者寺を擁する金沢市が、これからの観光に向け新開発した見世物として見れば、なかなか楽しい施設ではないかと思います。立地も兼六園に隣接していて、観光名所を歩いて回るときの、休憩場所としても便利です。

常設展の展示は、良くも悪くも20世紀の”現代”美術(今の時代から見れば過去)業界の価値基準で選ばれた作品を、その作品が評価された当時の評価基準で説明する解説を添えて展示しているのみで、21世紀の現在から、これらの創作活動を振り返る視点は見られませんでした。残念ながらこれでは、1990年代に日本のアート界で流行ったことを十数年以上遅れて真似ているようにしか見えず、厳しい言い方をすれば、童話「裸の王様」に出てくる仕立て屋のようなものです。21世紀に入ってから既に十数年を経た今、こういうキュレーションを公金で支援することの是非は、議論の余地があるところでしょう(そうしなければ文化そのものが流行と命運を共にして衰退してしまう)。

とはいえ、少なくとも私が訪れた2014年8月5日時点での展示作品について書けば、一部を除いては視覚的に美しい作品が多く、小難しい芸術論など何も知らなくても、充分に楽しむことができます。どんな作品を収蔵するかという選定基準については、江戸時代から続く、金沢の工芸の精神が、引き継がれているのかも知れません。

今回見た常設展示作品の中では、照屋勇賢(米国在住)による、マクドナルドの包装袋を使った、精密な切り紙細工が印象に残りました。一方、ヤノベケンジの作品については、良くも悪くも、日本の一時代の風潮を反映させた、時間的にも場所的にも極めてローカルな作品であるにも関わらず、現在から当時の彼(のような輩)の行動を振り返る視点での紹介が全く無く、この美術館のキュレーションが未だ、悪い意味での”業界人目線”による支配から脱し切れていないことが、露呈していました。

企画展(レアンドロ・エルリッヒ ーの作品展)は、舞台装置や映画のセットを作品化したような、視覚効果を狙った、大掛かりな作品群の展示で、これも理屈抜きで楽しめました。彼の作品の特長は、”芸術作品”という既成概念にとらわれないアイデアの豊富さですが、中には非常に手の込んだ作品もあり、「サイドウォーク」という映像作品は、一見すると、古いアパートが立ち並ぶ街の一角を、固定カメラで撮影したような構成でしたが、良く見ると、実写とCG(あるいはそれらに加えて模型を撮影した映像?)を合成したらしい、手間のかかった作品でしt。

その他、鹿の骨から、まるでドライフラワーのように、写実的な植物の形を切り出した橋本雅也の作品展、建築家中村好文の仕事(自然エネルギーによる自給自足の小屋作り)紹介も、特別な予備知識無く楽しめる企画でした。

この美術館は、東京やその周辺の美術館と比べれば、決して大きな施設ではなく、同時に展示できる作品数には限りがあります。けれど、一つの部屋に一つの作品のみを展示するという、ゆとりのある展示がなされ、展示室以外の、無料で利用できるスペースも広く、ガラス貼りの外壁からは芝生が敷き詰められた敷地を眺めることができ、全体的にゆったりした時間を過ごせる雰囲気があります。人口密度が高い首都圏では、このような、ゆとりのある空間を(ましてや市街地の中心部で)運営するのは無理でしょう。

私がここを訪れた日も、平日ながら夏休み中のせいか、館内は親子連れで賑わっていました。美術館の企画・運営を担当する人達が、自分達や収蔵作品の権威化を慎み、収集した”現代”美術作品(に表れた作家の行為)に対して、(20世紀末の業界基準ではなく)21世紀の現在から、20世紀の現代美術(と、その評価のあり方)を検証する歴史学的・社会学的考察を怠らなければ、この施設は、”21世紀”というネーミングに相応しい内容の美術館として、文化的な発信を、続けて行けるのではないかと思います。

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