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zoom RSS 昭和の亡骸

<<   作成日時 : 2014/12/23 01:47   >>

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先日、建築家の黒川紀章さんが生前開いた事務所が、会社更生法の適用を申請したとの報道がありました。
http://www.tdb.co.jp/tosan/syosai/3992.html
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ15HNP_V11C14A2TJ1000/
1960年代から1970年代にかけて、斬新な建築(計画)を発表した世代の建築家達の大半が、他界したり、第一線から退いていますが、こうした人達の影響力が薄れてゆくことは、社会的には損失というより、むしろ良いことかも知れません。

建築物の物理的な大きさや形状によって、時として経済性や利便性を犠牲にしてまでも、建築物に象徴性を与えて周囲の環境にインパクトを与えることを、建築家の力量とする。

恐らくは、昭和時代のモダニズムの先駆者とみなされた、前川國男らの世代より少し若い、丹下健三や、その弟子達の時代に顕著になった(ように見える)価値基準は、終戦直後のバラックが珍しくなかった日本で、これから鉄とコンクリートによる都市インフラを整備する必要性が高かった時代には、社会的ニーズに合致する部分が、大きかったのかも知れません。

けれど、人類の全ての活動の持続可能性が、社会的な大きな課題となり、とりわけ、経済規模の頭打ちに伴う格差拡大と固定化、高齢化の急速な進行による、生産年齢人口の急減が大きな社会問題となっている日本において、このような価値基準が、今も社会的ニーズ実現の役に立つのでしょうか?

モダニズムと呼ばれた価値基準の見直しが求められいる時代に、モダニズムとしての必然性からも逸脱したような象徴性が、建築物に必要なのでしょうか?

現在、日本国内で、多くの批判を浴びている、ザハ・ハディッドによる新国立競技場案は、環境へのインパクトに偏重した、価値基準の社会的弊害が、顕著に現れた事例ではないかと思います。

同建築案は、実際に施工した場合の経済合理性、火災等災害時の安全性など、経済的・科学的にもその合理性が疑問する声が数多く挙がっていたばかりでなく、人々の暮らしや文化への影響という点でも、深刻な悪影響が指摘されています(下記URLの11-15ページ)。
http://www.jia.or.jp/resources/bulletins/000/034/0000034/file/bE2fOwgf.pdf

こうした批判に対し、ザハ氏からの反論も出たと報じられていますが、日本語での報道を見る範囲では、ザハ側も指摘された問題点への、直接の反論を避けているように見えます。
http://matome.naver.jp/odai/2138222981105663301/2138377381370631303
http://www.gizmodo.jp/2014/12/post_16114.html

これらの対立について、磯崎新氏が、仲裁案のような提言をしていますが、
http://architecturephoto.net/38874/
磯崎氏はこの中で、本来、建築家を選ぶはずだった国際コンペ(具体的な計画・設計は諸条件を詳細に検討してから最終決定すべき)なのに、コンペに提出された図案が一人歩きしてしまったために、話がこじれたという趣旨の指摘をしていて、巨大なハコモノ作りに固執する、日本の官界・財界の根本的な問題点を、指摘しているようにも見えます。

いずれにせよ私達は、高度経済成長期に”良し”とされた価値基準、普段は意識もしないほど徹底的に刷り込まれている価値基準を、一つ一つ自覚し、見直す必要があるのではないかと思います。

今月始め、所用のついでに見に行った、金沢21世紀美術館で開催中の、2つの展示会
ジャパン・アーキテクツ 1945-2010
と、
3.11以後の建築
も、昭和の価値観と、これからの、あるべき建築の模索(完成した建築物の姿形より、計画から竣工に至る過程や維持管理のあり方を問題にする)との違いが端的に示されていて、一般来場者にも、その趣旨が分かり易い展示でした。

また先ごろ、熊本県にある荒瀬ダムの解体工事が始まり、それ以降、川の水が綺麗になるだけでなく、河口周辺の沿岸では、貝類などの漁獲高が回復したことが報じられました。
http://nikkan-spa.jp/766574
これからは、負の遺産となってしまった前世紀の構築物を解体し、環境を元に戻すことも、重要な公共事業になるのではないかと思います。




今年の秋の夕暮れ時、四十数年振りに見に行った、太陽の塔は、まるで、この塔が作られた昭和の後半に、映画やテレビで一世を風靡した、怪獣の亡骸のように見えました。


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